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灘香

灘香
時は明治三十七年、醸造試験所が創立された当時、それこそ、酒造の揺らん時代だ、当時、試験所投師として最も日本酒醸造に造詣が深いと自他ともにゆるした、高野淳治先生。パストールやハンセンなどの学説はもちろん心得ており、「醸界の羅針」と題する著書までも出版していたほどの大家だが、実地作業の経験はくらい。灘の、世界長の実況を見学した程度で、仕込の操作に直接手を下したことはあまりなかったものだろう。試験所で先生の仕込んだもろみは、次から次へと腐造してしまった。これを他の同僚が見て、「どうも先生、このもろみは変調ではありませんか?」とおそるおそる伺いをたてると、「なに、変調なものか。これは”灘香”といって、優良もろみの呈する独特の芳香だ…」と一喝をくらわされた。当時、職工だった、丹波杜氏の向井某や田谷垣某などは、試験所にくるまでは腐造の経験を知らなかったので、大そう不思議がり、またがっかりしたという話である。これは愛酒家、若槻礼次郎さんが所長のころであったという。灘香の出所、あるいは、こんなあたりからではなかろうか?口の悪い人は「樽詰酒の時代、東京に下るころまでには灘香は木香ですっかり消されるから大助かりしたのだ」と、もっともらしいことをいったが、これでは灘香があまりにも可哀想だ。本当にきずもの扱いだ。?
そこで、私は灘香のかたをもつわけではないが、灘香を弁明したいのである。私は灘香は、灘酒特有の個性を持った、クラシックな好もしい香気、日本酒独特の香気だと考えている。

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2008年05月14日 11:48に投稿されたエントリーのページです。

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